千斤…二胡の内外弦をまとめ、振動を制御する大切な部品…
この千斤について、小林が2016年8月に思っていることをまとめて書きたいと思います。
(随時変わっていくことが予想されますので、何卒参考程度の話としてください。)
千斤が変わると何が変わる?
千斤にはいくつか種類があります。
手に入りやすいものを大きく分けると、次の2種類となります。
・紐千斤 … タコ糸、ポリエステル素材等
・固定千斤 … プラスチック、木材、牛骨、金属等
千斤によって、二胡の状態が変化するのですが、なにがどう変わるかということはなかなか言葉にしずらいです。
それでもあえて言うなら、僕は、「弦の振動の“締り”具合」と感じています。
千斤が良い状態だと、運弓によって与えられた振動が、振動させる目的の場所<駒から千斤までの間の弦>の中で、統制がとれた状態できれいに振動しているように感じます。
逆に千斤が悪い状態ならば、千斤が弦の振動を制御しきれずに<駒から千斤の間の弦>以外の部分に振動エネルギーが漏れてしまい、振動に生気が失われているように感じています。
この結果として、千斤が悪い状態の二胡で、ウルフトーンが起きたり、音が出しくかったりして、「弾きにくい」「音が悪い」と感じているのではないでしょうか。
特に、僕には音の“生気”という感覚が大切で、生気のある音は、音が自分から出て行ってくれる(弾きやすい)、ぎゅっと引き締まった生命感のある歌声を奏でる(音がいい)と感じています。
紐or固定 どっちがいいの?
僕は固定千斤でこれまでいいなと感じたものはありません。
QQ千斤という固定千斤の一種があり、これには機能的にもかなり希望をもったのですが、結局使いませんでした。→理由は過去に記事にしました。
これは僕の弾き方とも関係があるとは思います。
Q:「紐千斤は弾いているうちにずれてきて開放弦の調弦が狂う」
A:僕はこのように感じたことはありません。僕は千斤から弦が離れてしまうほど押弦に力が必要だと思っていないので、千斤がずれるというのは僕にとっては力の入れすぎが原因だと考えます。
Q:「引き弓と押し弓で音程が変わってしまうのだが、固定千斤だと収まった」
A:引き弓と押し弓の“弓の角度”や“弦への圧力”は同じでしょうか?運弓だけで音程が変わるなんて、弦に加えている力の状態にかなり違いがなければ起きにくいと思います。
弦楽器で音程を決めるのは「弦の長さ」「弦の張力」です。弓を押すか引くかで、千斤自体がこの2点に対して違う状態を生み出すようには思えません。
*よくある質問にあえて答えてみましたが、実際にはどんな二胡をどんな風に弾いているのか見てみないとはっきりしたことはわかりません。
楽器の調整状態でこういった症状がでることもありえますので、疑いがあれば他の人に自分の楽器を弾いてもらって、誰が弾いても同じ問題が起こるか試してみてもいいかも。
というわけで、小林は紐千斤がオススメです。
小林おススメの紐千斤
小林がオススメしているのは、ダイニーマという素材で作られた紐千斤です。
こばやし二胡教室でも扱っていますが、色がいろいろ混ざっています。十三堂楽器さんでは、黒一色、白一色のダイニーマ千斤が販売されています。
これはとても生気のある音になります。開放弦の音と押弦の音の音色の差が小さいのもポイント。
なにより、ダイニーマ千斤は「千斤の良い状態が長持ちする」ということが大きなメリットです。
千斤は劣化する
紐千斤は、竿に数回巻いたあと、竿と弦に何回か渡して縛ります。
使っていくと、弦にわたっている千斤それぞれの力のバランスが狂っていきます。
もちろん、紐素材自体が伸びてしまうこともそれに拍車をかけます。
それで、良い紐千斤でも、使っていくと良い状態を保てなくなっていきます。
「最近調子悪いな…」と思っていた二胡、千斤を巻きなおすだけで生気復活!という経験はたくさんあります。
上のダイニーマ千斤は、この狂いが少ないのか、良い状態がかなり長く持つような気がします。
それでも、数か月に一度はまき直し、年に一度は新品に交換した方が良いと思います。
千斤の高さ
千斤の高さについては過去に記事にしました。
→千斤取り付けの考え方 その1【高さ】
→初心者卒業したら千斤は高く!
また、有名な千斤の高さの合わせ方、というのもあります。
→はじめての千斤の高さのあわせ方
このはじめての合わせ方、というのは、本当に「初めての人」に向けてのものです。
「二胡これから始めるの?じゃ~千斤どうしたらいいかなんてわからないよね。まあとりあえず、このへんにしといたらいいんじゃない?」
という程度のものです。
千斤をある程度高くすると音色と演奏性が上がるのは本当です。
でも自分の演奏スタイルに合った高さである必要があります。
千斤の高さによる影響を理解し、自分の音楽のために自分で高さを探したいものです。
僕も、千斤の高さはいつも変わっています。
昔は「駒から何センチ」と数字で覚えていましたが、いつからか本当に適当になってきました。
自分が気に入らなければ、すぐにずらして調整しています。
千斤の幅
こちらも過去記事より
→千斤取り付けの考え方 その2【幅】
→はじめての千斤の幅の目安
2016年の僕は「自分の親指の爪の7割くらい」の幅にしています。
巻き方
こちらも過去記事紹介。
→二胡・千斤のまき方
弦に8回まわるように巻いています。
なぜその回数か?1回巻から20回巻までためして、一番いい感じだったからです(笑)
それで、現在の小林二胡の千斤は?
ずーーーーっと気になっていたんです。
研究努力によっていろいろな素材の千斤や複雑な仕組みの固定千斤など様々にラインナップしているのに、どうして有名な演奏家たちは皆白い紐千斤ばかりなんだろう…
あれたぶん、タコ糸だよな…まさか、先端素材が安いタコ糸に負けるはずがない…そう思っていました。
ひょんなことからちょっとタコ糸を千斤として使ってみると、なんということでしょう!!
これまでに使ったどの千斤よりも、ぎゅううっと密度が高く、ハリがあって、生気が漲っている二胡になりました!!
ダイニーマ以上です。
というわけで、2016年小林の二胡の千斤はタコ糸です。
今は、近所の100均で売っていた細いほうのタコ糸を使っています。
ところが、大きな問題もあります。タコ糸千斤は良い状態があっというまに終わってしまうことです。
長くて1週間。ほんとうにあっという間です。
それ以後は、だらけた音になっちゃいます。
これまでタコ糸千斤に魅力を感じなかったのはこのせいだったんです。
小林は最近は週1で千斤を新品交換しています。
2016夏千斤まとめ
千斤は紐がいい!
頻繁に交換できない人はダイニーマ
自分で交換できる人はタコ糸
というのが小林のこの夏のトレンドです。
ぜひご自身でいろいろ試して、自分の好みの千斤セッティングを見つけてください!
どうぞご参考まで。