弓と胴がこすれあう箇所の部品・デンペン。
プラスチックなどの樹脂で出来ているこの部品は、演奏のときの摩擦によって少しずつ磨り減って生きます。
上の画像の二胡は、白いデンペンが磨り減って、下にある蛇側の淵のプラスチックが見えてしまっています。こうなると、デンペンそのものを交換することになります。
ちょっと手間なんで自信がなければプロに依頼されるといいと思いますが、作業自体は難しくないので、自分の楽器は自分で面倒みたい!という人は是非(自己責任で^^;)チャレンジしてみてください。
まず準備
まずは、デンペン交換のための準備として、胴だけの状態にします。
やり方は以下記事をご参照ください。
◎二胡をバラバラにしてみよう
面倒でも台座もはずしておきましょう。
作業には細心の注意を。怪我したら気持ちも落ち込みます^^;
また、細かい削りカスなどがでますので、下に新聞紙などを広げて作業しましょう。
古いデンペンをはがす
デンペンは蛇皮の上に接着剤で貼り付けられています。
蛇皮の隙間にナイフや細いマイナスドライバーなどを差しこみ、蛇皮を傷つけないように注意しながらゆっくり磨り減ってしまったデンペンをはがしていきます。
とれたー
毛の摩擦によって磨り減った部分。
完全になくなってしまっています。ここまでくる前に交換したいですね。
古い接着剤を取る
細いナイフなどで、接着面に残っている接着剤をできるかぎり取り除きます。
“古い接着剤を取り除く”というのは最接着を行う際にとても大切な行程で、念入りに行いたいところです。
でも、蛇皮の表面、ウロコの凹凸面に塗られた接着剤の完全除去は難しく、蛇皮を傷つけることになってはいけないのでほどほどに。
デンペンの成型
次に、新しいデンペンをこの二胡に合うように成型します。
二胡店で売られているデンペンはこんな感じで、雑な形で切りっぱなしのもの。
二胡のデンペンが貼り付いている部分は厳密にサイズや形状が決められているわけではないようで、二胡によって微妙にちがいます。
そのため、市販のデンペンは余白を含んで大き目のものが売られていて、個体にあわせてデンペンを作らないといけないのです。そのまま使うことは難しいと思います。
現物あわせで形を整えていきます。
角にあわせて曲げるには、曲げるラインをペンチではさんで、曲げる箇所をゆっくり押して曲げていきます。
無理して折らないように!
さらに二胡にあわせてみて、切り取る部分に線を引いていきます。
その切り取り線に沿って、よく切れるハサミでカット。
すこし大きめに切り出して、また二胡にあわせてみて、すこしずつ形を整えていきましょう。
形が決まったら、ハサミの切り口にできる“バリ”を紙ヤスリで整えておきましょう。
*できあがり!*
両端は丸くカット。こういうのを綺麗にしあげるのにも、紙ヤスリが便利です。
楽器にあわせてしっかり曲がっています。
貼り付ける
二胡、デンペン両方の接着面のゴミ、ホコリを丁寧にとって、接着します。
接着材はそれぞれ好きなものを使われると思いますが、僕はゼリー状の強力瞬間接着剤を使っています。
デンペンはデコボコの蛇皮にピッタリと貼り付ける必要があります。
デンペンが浮いてしまうと、その浮いた部分が弓の毛の摩擦で振動して、シャーという雑音が出てしまうこともあります。
(安価な二胡でペラペラの薄いデンペンがついている場合、接着剤がはがれてしまってこういった雑音がでることがあります。)
そのため、
隙間があるデコボコ面でも強力に接着でき、浮かないように押さえておく時間が短くて済むゼリー状瞬間接着剤は便利です。
二胡、デンペンの接着面にまんべんなく接着剤を塗ったら、貼り付け位置をよく確認して接着!!
僕はこうやって瞬間接着材が固まるまで指で押さえています。
特に、弓の“毛”と“竹”が当たる部分が浮かないように親指の腹でしっかり圧力をかけます。
かなり大変です^^;。
デンペン自体の反りがあるので、単にくっつけたり、テープで押さえたりしたくらいでは密着できません。接着したデンペンを押さえておける専用の器具を自作したりもしましたが、器具を取り付けている間にズレたり接着剤が乾いたりとうまくいかなかったので、今は自分の力を信じて押さえています。
フカフカと浮いているところが無いか確認しながら、それなりに接着されるまで頑張ります。
完成!
新しいデンペンが綺麗につきました!
瞬間接着剤も完全硬化には時間が必要ですから、この状態でしばらく置いておくと安心です。
問題がおきなければ、再組み立てします。
◎二胡を組み立てよう
デンペンの交換ができました!
確認
見た目もそうですが、実際に弾いてみて「シャー」という雑音が聞こえないかを確かめます。
雑音が聞こえた場合、以下を疑います。
・新しいデンペンの切り口の“バリ”が鳴っている?
・新しいデンペンの貼り付けが甘くて浮いていて、デンペン自体が鳴っている?
・デンペン以外の問題(再組み立て中になにかあった?)?
デンペンの貼り付けが浮きなくちゃんとされていれば、バリは紙ヤスリでとればいいので、大した問題ではないと思います。
もしデンペンが浮いた状態で接着されてしまって、それにより雑音が出る場合は、またデンペンをはがして、固まった接着剤を全部はがして、やりなおすことになります。
接着は慎重に!
磨り減り具合は人それぞれ
デンペンの磨り減る量は練習量に比例すると思いますが、けっこう個人差があって、上手下手経験関係なく、磨り減る人はガンガン減るし、減らない人は全然変わらないような気がします。
ここで紹介した交換作業は20分ほどかかりました。
接着など慎重を期す部分もあるので、けっこう大変です。
なので、そもそもデンペンが磨り減らないように、デンペンの上にテープを貼る方法が知られています。
◎デンペンにテープ
僕はブログ読者さんに教えてもらった「金属デンペン」を採用しています。
これは全然磨り減らないのでいいですよ!
◎金属デンペンのススメ
そういえば数ヶ月前、「シャーシャー」いってたんです。見るとデンペン少し減ってまくれ上がってましたが。
その後音がしなくなって、性格上すっかり忘れてました。
以前別の二胡で張り替えたことありました。でも、あれから数年老いてくるといろいろが煩わしいのでテープ貼ろうかしら?
テープとかでデンペンがへらないようにするのがらくですよ。毎日テープ張りかえるとしても、なれてしまえばなんともなかったです。